磨くは原石、精製は油脂

SixTONESについてのごくごく個人的な話をします。

【予習】夏の夜の夢をみる為に予めしたことを記録する。

 舞台『夏の夜の夢』の観劇をするにあたって個人的に行った予習の記録を残しておきたいなという気分になったので、そうすることにしました。

 予習を本格的にしたのは2022年8月下旬~9月初旬です。以下の記録は主にこの時期のものだと思って頂ければ、と思います。

 

なぜ予習をしようと思ったのか

 予習をするに至った理由はいくつかありました。

 しかし、主要且つ最大の理由はたった1つ。

 それは、『このカンパニーが持つ本作への解釈をちゃんと受け取れる状態で観劇したい』という欲が生まれたからです。

 シェイクスピア作品は太古から世界中で何度も演られていると流石の自分でも知っていました。

 そうなると、明確なお手本があるわけでもなさそうなこの手の作品は、『そのチームやカンパニーが原作をどう解釈したか』も上演及び観劇の醍醐味に含まれるのでは?

 この考えが浮かんだ時、その独自解釈部分を感じ取る為にストーリーの事前理解は必須であろう、と自分は判断したわけです。

 

 

筆者のシェイクスピアスペック

 予習前の段階で、本記事筆者のシェイクスピアスペック(?)は以下の通り。

  • シェイクスピア作品の舞台観劇経験はゼロ。
  • マクベスは大昔に漫画でサラッと読んだが、内容は断片的にしか覚えていない。
  • 学生時代に部活動で縁があり、当時オセローの日本語訳版を文庫で買ったものの、戯曲特有の表記と言葉遣いに馴染めず挫折。
  • ロミオとジュリエットは雑に知っている。どうしてあなたはロミオなの、とか。(が、正直ウエストサイドストーリーとごっちゃになっている。)

 こんな奴が頑張って予習したんだな〜と大目に見て頂きとう存じます。何卒ご寛容に!

 

今回の予習の目的

 今回行った予習において、自分は明確な目的を設定していました。

 それは、『物語の内容(筋)を頭に入れること』により、スムーズに観劇を楽しむ準備を整えておくということ。もっと言うならば、スムーズに観劇するのに最低限必要(と個人的に判断した)な情報を入れること

 そして、上記以外の情報は基本的に徹底排除し、観衆としての第一印象を持つ機会を損なわぬよう努めました。

 

 

具体的な予習記録

 記録したいと思った書籍のみを抜粋し、読んだ順に、書籍のタイトル・作者や訳者・発行元と個人的感想を記録します。

 尚、以下の内容につきましては、決して各書籍の是非を問うものではございません。あくまでも今回の予習における個人的目的に沿っていたかどうか、という観点で感想を書いております。

 その点を予め念頭に置きつつ読み進めて頂けますと幸いです。

 

 

①『夏の夜の夢』/原作:シェークスピア(以下略) /再話:ナオミ・ルイス /絵:シルヴィ・モンティ /訳:久山太市 (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

 

 絵本だと思って楽に読めると思い込んでいたが、すっかり騙された。笑

 率直に言って、自分がイメージする『絵本』の内容量ではなかった。絵本として読むには内容量が重く、物語を頭に入れる為に読むには軽い。それ故か、やや読みにくく感じてしまった。単純に自分との相性が合わなかったんだと思われる。

 物理的に薄く手に取りやすいので、分厚い本に拒絶反応が出ちゃう方にはオススメ。登場人物と話の大枠をざっくりと把握するのに向く。

 


②『シェイクスピア文学館2 物語 夏の夜の夢』/文:小田島雄志 /画:里中満智子(汐文社)

 

 予習の為の1冊を選べと言われたら、間違いなくこれ。圧倒的に読みやすかった。

 小説形式で作ってあるので、小説を読み慣れている自分からすると、内容がすらすら頭に入ってくるのが良かった。しかも児童書なので、最低限必要な注釈も本文中に差し込んである。ストーリーの予習には持ってこいの1冊。

 本好きの小学校中〜高学年であれば、難なく読めるはず。それくらいに読みやすく分かりやすい。とりあえずストーリーをしっかり頭に入れたい&小説を読む方はこれ一択では?

(個人的に感じた圧倒的読みやすさについては、挿絵が見慣れている絵だったのもあるかもしれない。大昔に読んだマクベスの漫画をはじめ、椿姫・カルメン蝶々夫人、更にはギリシャ神話の漫画も、全て里中満智子さんの作画で読んできたので。)

 

 

③『夏の夜の夢・あらし』/訳:福田恆存(新潮文庫)

 

 一気に戯曲感が増した。

 ①②は『読み物』だったが、これは読み物ではなく『脚本』。脚本形式になると一気に情報量が増える。否応無しに舞台上の情景が画として頭に浮かぶので、それに慣れるまで少し時間がかかった。物語ではなく資料を読んでいる感覚。指示書としての役割を含むので、ツルッとは読めない。

 だが慣れてくると、小説を読むのとはまた違った面白さがあるのに気がついた。自分でも驚いたのは、書いてある台詞を声に出して言ってみたくなったこと。やはり人の口から言わす前提で書かれているからだろうか?

 脚本は『目で読ませる』為ではなく、『口で読ませる』為のものなのだな、という実感を得られたのが良かった。

 訳者による解説つき。主に『夏の夜の夢』という作品の出自と歴史的背景、及びタイトル訳についての解説。読んでいて面白くはあるが、ストーリーについての直接的な解説ではないので、観劇前の予習としては必読ではないと自分は思う。

 

 ちなみに自分は、この本から本文中に分からないことが多発し始めた。

 ②は読みやすいように、本筋を保ちつつも分かりにくい描写や台詞はカットされていたが、こちらは脚本の日本語訳なので、細かい描写やジョーク混じりの台詞等も含まれている。予備知識が無いと面白さに気づけず、はて?となってしまう。

 特に、そこそこ過激(それこそ今ならコンプラ的にマズいやつ)な悪口や罵り文句も出てくるが、その罵り文句が何故罵りたるかが私には分からなかった。文脈的にこれは相手を罵ってんな〜とは分かるが、なぜその言葉が罵りの意味合いを持つかが分からない。(例:エチオピア女、韃靼人)

 例えるなら、『このコンコンチキ!』と言っている人を見て、『おそらくこの人は揶揄の意味を込めて"コンコンチキ"と言っているのだろうが、"コンコンチキ"という言葉自体の意味が分からん。一体どういうわけでこれは罵詈雑言なのか?』という風になる。

 

 

④『真夏の夜の夢』/訳:三神勲(角川文庫)

 

 本文でやってあることは③と全く同じで、訳者が違うだけ。

 ただ、自分には本書の訳注が非常に良かった。上記で述べたような『何じゃこりゃ?』な部分は全て説明してくれている。しかも簡潔に!最高やん!

 例の罵詈雑言達にもしっかり訳注がついているので、登場人物が相手の何をどういう意図で罵っているのかが分かるので助かった。

 故に、しっかりフルで読むならこれかな、と。

 これの本文と訳注が頭に入ったらば、もうストーリーの予習は出来たと思って良さそう、と自分は判断した。

 

 こちらも本文後に解説付。

 しかし、数ヶ所に解説者の考察や芝居作りについての内容が含まれている様に見受けられたので、それらを薄目で見た時点で読まないことにした。

 これは個人的な考えだが、いち観衆として、〇〇が見所だ!というのは知りたくない。どこを見所だと思うかは、他でもない自分自身が決めることだから。こと初めての観劇においては、専門家の思う見所は知らない方が自分にとっては都合がいい。

 自分は完全なる『プレーンな観客』として臨みたいのである。

 

 

⑤『シェイクスピアを楽しむために』/著者:阿刀田高(新潮社)

 

 シェイクスピア作品の解説集みたいな本。夏の夜の夢を含む12作を解説してある。

 単行本サイズの12ページ程度で物語の筋を頭から終わりまで一通り説明してくれる。著者の口から『この話はこれこれこうで…』と口頭で教えてもらう感覚で読めるので読みやすい。今回読んだ中で1番読み物らしかった。

 とにかく時間がない&話のあらすじと登場人物の要点を押さえて把握したい方には持ってこいの本。

 ただ、後半以降は著者の考察を含む内容が書かれている。観劇前の予習段階においては入れぬべき内容であると判断し、自分は途中で読むのを辞めた。

 

 

⑥『新訳 夏の夜の夢』/訳:河合祥一郎(角川文庫)

 

 これまで挙げてきた①~⑤は図書館で借りたが、やっぱ今回の舞台の訳者による訳も読んでおこう!と思い立ち、Amazonにてポチった。

 

 圧倒的情報量。

 シェイクスピア然とする言葉の佇まいを崩さないことに重きを置いてある故に、当然本文は読みにくい。大量の注釈がついているが、その注釈の大部分は韻について。原文(英語版)の面白さを知るにはピッタリ。

 しかし、それだけ『台詞の面白さ』に触れてある分、当然訳者の考える(+学術的に見た)本作の見所も大量に書いてある。その為、自分の予習目的からは逸れると判断し、注釈は途中で読むのを辞めた。

 夏の夜の夢という物語を楽しむ為ではなく、『シェイクスピアの面白さとは何ぞや』な視点が常について回る訳文なので、物語の筋は頭に入った状態で読むことを自分はオススメしたい。

(どうも、観劇後の筆者でございます。こちらの本ですが、今回の舞台の脚本ほぼまんまなので、個人的に予習よりも復習向きだな、と思っています。脳内上演の道具として非常に役立ちますよ!理想的なのは、ストーリーのみ予習→観劇→⑥で復習&補填→再度観劇 という流れだろうな~と考えてはいますが...何せ人気公演、チケットが2公演分も手に入るわけがなく...。うおお再演頼まァ!!!)

 

 

《感想と総括》ひとしきり予習してみて

 本作を観劇できると決まった時点で、今回は予習を行うと決意。

 図書館で関連書籍を15冊くらい借りてきて一通りつまみ読みしたが、たった15冊でも解説の趣が多岐に渡ることに少々驚いた。

 そもそも、シェイクスピア作品のみならずシェイクスピアという人物自体が、文化・学術・歴史・文学・語学・舞台・芝居、ひいてはビジネスモデルとしても研究観察対象になり得るデカブツなのだろう。故に、解説の趣も沢山あれば、まー関連書籍が大量なのも頷ける。

 とりあえず、『観劇時に物語についていくのに苦しまない程度の準備』をしたいのならば、⑤か②を読んでおけば間違いないと思う。時短派とエッセイ系の読み物派は⑤、物語の内容はちゃんと把握したい&小説派は②かな。⑤→②と読んでおけばバッチリ頭に入るはず!スムーズに情報量を増やしつつ読めると思う。

 罵詈雑言や台詞の細部を含め、しっかり戯曲として読みたい派は④。脚本状態のまま訳された書籍の中で、物語と台詞を理解するのを目的として読むならば、これがダントツで分かりやすく、痒いところにも手が届くと感じた。訳注も初心者からすると過不足が無い印象。

 ⑤→②→④と読んでおけば、観劇前のストーリー予習としてはパーフェクトなのでは?と自分は考える。

 

 あと、やっぱ漫画とはいえギリシャ神話を読んでいたのはデカかったかもしれない。

 時代の影響もあってか、本作中に出てくる奴等のほとんどはマジで(ちゃんと悪い意味で)ヤバいので、そこに引っかかり始めると何も頭に入らなくなる。『父親の決めた相手と結婚しない娘は死刑or出家すべし』という内容を見て、『はぁ?!ふざけんなよこのコンコンチキ!』などと思っていると身も頭も持たない。

 その点、ギリシャ神話を見慣れていたおかげで、『ヘイヘイこの人は他に恋人がいるのね〜』とか『ヘイヘイこの人は恋の為なら死ねるのね〜』とか『ヘイヘイこの人の人権は父親又は夫に掌握されてんのね~』とかいう感じで柔らかく受けとめられた。まぁそもそもフィクションなので一喜一憂することもないけれど。

(ギリシャ神話しかり日本神話(古事記)しかり、神様やら妖精やらの所謂『人ならざるもの』の方が人間なんかよりもよっぽどご自分の意思(=欲)に素直でいらっしゃるし、人柱も生贄もオールOKな世界線なので。)

 少なくとも、本作(舞台『夏の夜の夢』)においては、観る側も観せる側も、おそらく『共感』というピースは不要。ツッコミも不要。正しさも正義も不要。ただただ『役者が面白えことやってる』のを生で観て、手を叩いて楽しむのが良さそう。だってそういう脚本だもんこれ。生身の人間がこれを大真面目に演じるのが滑稽で面白いって話だから。舞台でやること前提のお話だよね。

 個人的な素人感覚としては、歌舞伎の演目の鷺娘と近そうに思う。あれも物語はあるけど、主要なのは物語ではなくて早着替えとか踊りの部分だから。もはや物語自体はオマケですらある。(無論、演る側からすればそうともいかぬのだろうが…。)

 とりあえず、この作品は人間(役者)が演ることのみによって完成するやつだ。結局観てみないことには全貌が分からん。

 

以上 2022年8月終わり時点 予習の感想

 

 

あとがき

 さて、以上が筆者が観劇前に行った予習の記録でございます。

 実際のところ予習の効果は絶大で、心の底から観劇を楽しむことができました。

 そして何より、本当に本当に素晴らしい舞台だった!!!!!観られて良かった!!!!!

 早くも人生ベスト作品群に入るものに出会えたな、と思っています。

 

 本日2022年9月28日は舞台『夏の夜の夢』の千穐楽ですね。

 おめでとうございます。

 どうか本作に関わる全ての皆様が、最後まで無事に夏の夜の夢をみられますよう。